推薦者

三木 あき子(みき あきこ) 三木 あき子(みき あきこ)
パレ・ド・トーキョー現代創造サイト、チーフキュレーター

ナンジョウアンドアソシエイツ、D2アートプログラム、コ・ディレクター等を経て現職。主な企画に「1995ベニスビエンナーレトランスカルチャー」展、「不易流行:中国現代美術と身の周りへの眼差し」展、「1998台北ビエンナーレ:欲望場域」、「SPIRAL TV」展、「Twilight Sleep」展等のテーマ展およびTobias Rehberger、Rivane Neuwanchewander、Jennifer Allora & Guillermo Calzadilla, Henrik Hakansson, Sergio Vegaらの個展がある。『Very New Art 2000』、『World Artists Now』(2005)、『Araki : Self Life Death』(2005)共著。『BT』、『Tema Celeste』、『Paris Photos』等、雑誌への執筆も多い。

<推薦作家/作品>
  1. アイスランディック・ラブ・コーポレーション
    Sympathy
    Thank You
    Where do we go from Here?
  2. ザ・キングピンズ

<推薦文>
Icelandic Love Corporation (ILC)

1996年に結成されたアイスランディック・ラブ・コーポレーション(ILC)は、SigrÚn Hrólfsdóttir、 JónÍJónsdóttir、EirÚn Sigur_ardóttirら3人の女性によるコラボレーティブ・ユニットだ。作品は写真、ヴィデオ、オブジェ、ドローイング等多岐の形態をとるが、その基本はパフォーマンスで、そこで使用される音楽、スクリプト、詩、振り付け、衣装などのほとんど多くを自ら手掛けていることが特徴的である。バイカーやクラシック音楽奏者、消防隊員といった一般の人々を巻き込んだかたちでのセレモニアルな設定もしばしば見受けられる。ILCの作品世界では、一歩間違えばアマチュア感覚に陥りかねないぎりぎりの危うさの魅力がある。それは、また彼らの作品における善と悪、強さと弱さ、寒さと熱といった対峙する概念の境を行き交う志向や、しばしばパフォーマンスの舞台となるアイスランドの自然景観の壮大さやミスティカルな空気によってさらに強化される。「愛は私たちを救う」というILCの活動信念は、なんともナイーブで少々気恥ずかしく耳に響くが、その真剣さに現代の高度消費情報社会の現実に対して、オルタナティブな表現方法、コミュニケーションの形態を提示する可能性が秘められているような気がしてならない。


The Kingpins

キングピンズは、オーストラリアシドニー在住の4人の女性によって2000年に結成されたパフォーマンス集団である。2004年台北バイエニアルや2006年リヴァプール・バイエニアル、パレ・ド・トーキョー(2006年)等、近年は海外での活動も多い。ライブショー、ヴィデオ・インスタレーション、ドローイング等で提示される彼女等の作品世界は、ドラッグシーン、ロックミュージック、ホラー映画を直接的に参照しており、大衆文化の表現モードを徹底的に模倣、誇張し、歪めて見せる。極めてエンターテイメント性の高いこれらの作品には、マスメディアや消費社会に対するクリティカルな視線が明らかに読み取れるが、より注目されるのはそれが男装パフォーマンスである点だ。彼女たちは男性ヒップホッパーやヘヴィ・メタルミュージシャンに扮し演じることで、現代生活における過剰な男性エネルギー崇拝を浮き彫りにするとともに、現代社会における個人のアイデンティティの在り方という極めて深遠な問いに言及している。

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