「17分間、フォーカスの合ったシーンなど1秒たりともなく、目に映るイメージは、ただただ、ボケて、流れて、ざらりと荒れているだけ。ぬるい夜の、白けた闇の世界に、ぶら下がり、ひっかかり、ちぎれ飛んで行く光芒。
35年もまえの、新宿の、深夜のアトモスフェア。サウンドは、ナナハンのマチンのエンジンとタクシーのクラクション。写したぼくは、かぎりなく懐かしい、あの頃の新宿の25時に立ち戻っていた。」 (森山大道)
森山大道は1938年大阪府生まれ。戦後日本を代表する写真家の一人である。それまでの写真表現に挑戦状を叩き付けるかのような独自のスタイルは、後世の写真家たちに多大な影響を与え、また写真の可能性を広げた。本映像作品は、森山が40数年もの間足を運び撮影し続けた「新宿」の街を自転車にのりながら8ミリヴィデオで記録した1973年の作品である。この映像は、森山の新宿シリーズの作品を実際に作家がどういう視線で捉えていたかという貴重な研究資料にもなるだろう。(協力:タカイシイギャラリー)
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© Daido Moriyama, Courtesy of Taka Ishii Gallery
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