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鈴木光 / Hikaru Suzuki |
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誰もいないのび太の部屋、公園、雨の降る野比家。鈴木光の2008年の作品「ドラえもん」に、登場してくるキャラクターは誰もいない。ただただ不在の背景が続く。誰もが見慣れたはずのドラえもんの漫画は、圧倒的な不在感とよそよそしさをもって我々に迫る。
この作品で鈴木はアートアワードトーキョー審査員賞を受賞。ロンドンで展覧会に参加したり、同年のアートフェアで大規模なインスタレーションも展示した。
鈴木光は1984年生まれ、2009年よりIAMAS岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー (International Academy of Media Arts and Sciences)在学。岐阜県在住。
「鈴木光はその制作実践において、ひとつの幹から複数の枝葉が伸びるかのような展開を、今まさにみせている。
作品に特徴的な枝葉をいくつか挙げると、ヴィデオというタイム・ベースのメディアの特性を見事に活かした《電車》(06)、《粉》(07)、ユーモラスな映像が魅力的な《クリスマス》(06)、《港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ》(07)、そしておかしみとは逆にメランコリックな様相をみせるものとして《トラウマ》(04)、《ドラえもん》(07)といった分類ができる。特に《粉》の洗練度と《ドラえもん》の編集の妙技、《電車》の時間の構成は、特筆に値する完成度である。また同時にそれらは、ユーモアとメランコリーが共存するなど、同じルーツをもつ作品として要素を交差させながら成立している。
こうした鈴木の作品はいずれも、日常の観察から着想を得ている。作品が単に日常を映像化した、技術に依拠するだけのテクノロジー礼賛に陥っていないのは、シンプルかつコンパクトな表現で見る者の視点を転換させる、鈴木光の秀逸な視点とメディアの用法によるものである。これからどんな枝を伸ばしていくのか、今後の展開が期待されるアーティストである。」
(飯田志保子/東京オペラシティアートギャラリー キュレーター) |
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© Hikaru Suzuki
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