1981広島生まれ。東京工芸大学メディア工学専攻卒。最初の 個展「All Notes Off」(2004)から,精力的に様々なプロジェクトに参加している。2007年には、ポルトガルMaumausにて一年間の滞在制作／発表を行い、ヨーロッパへもその活動を広げている。
作品は写真、映像、インスタレーションと多岐にわたり、日常そのものへの懐疑を観察し続けたうえでの辛辣な視線から生み出される表現は、辛辣であるがどこか温かいユーモアが漂っている。
「The World」は、現在増本が主に取り組んでいる一連の映像作品のプロジェクトである。ある言語で書かれたその国の料理のレシピをその言語を全く解さない人に渡し、料理を作ってもらう過程を捉えた記録映像は、「理解すること」が困難な状況下での人間の言動に着目することで、その可笑さ、稚拙さ、あるいはその背後に潜む社会性などを浮かび上がらせる。また、異なる文化の生産物である料理を作る行為は、なにかしら相対する理解不能な文化への意識を超えた寄り添いの身振りであるといえるだろう。そして、そうした言動の重層が現在の世界のあり様を呈していること、また出演者のそうした行為がいやおうなしの異文化への理解へとつながっていることに観客は気づかされることになる。 また食べるものを作ることという行為の親密で原初的な部分と、それを数名で行う際の関係性の微妙な変化など、記録としての面白さも浮かび上がる。